いらっしゃいませ。何にしましょうか?」

「そうね。チューリップがとてもきれいね。そこの、紫のチューリップと、黄色のチューリップをくださいな。」

「はい。どうも。この蒼いチューリップはサービスです。」

ウサギのミーちゃんは、遠くのほうからこの花屋の様子を見ていました。ミーちゃんはいつも街に来るときには、この花屋の前を通って様子をうかがっています。それはなぜかというと、ミーちゃんは、花がとっても好きで、将来はお花屋さんをひらくことを夢見ているからです。

ミーちゃんは、お母さんから頼まれたおつかいをすますと、家に帰りました。ミーちゃんの家は、山の中腹くらいの、自然がとても豊かで、眺めもいいところにあります。家の窓から見る景色は絶景です。なぜこのような家に住んでいるかというと、ミーちゃんのお父さんは画家なので、景色のいいところに住みたかったのです。街までは少し遠いけど、ここに住んでいれば、いつでもいい風景を描けるでしょう?

「お母さん、ただいま。おつかい行ってきたよ。」ミーちゃんのお母さんは、足が不自由なので、ミーちゃんがいつもおつかいに行きます。

「あら、どうもありがとう。お父さんの絵は売れたかしら?」

「うん。そんなに高くは買ってもらえなかったけど、ニンジン七本と交換してくれたよ。」

「まあ、それはよかったわね。今夜はニンジンのスープにしましょう。」

「わあい。今夜はごちそうだね。おいしそうだなあ。」ミーちゃんの家族は、お父さんが描いた絵をお金に換えて、生活していました。

お母さんは、ミーちゃんの持ってきたニンジンを料理しました。外も暗くなってきて、お父さんも帰ってきました。

「ただいま。くんくん。おや?とてもいい香りがするね。」

「そうだよ、お父さん。今夜はニンジンのスープだよ。お父さんの絵と交換してもらったんだ。」

「そうか。それはよかった。お父さんも一生懸命描くからね。」

「頑張ってね、お父さん。」

「ありがとう。」ミーちゃんたち家族は、ニンジンのスープを囲んで、楽しい食事の時間を過ごしました。

「ごちそうさま。」食事を終えて、お父さんは席を立ち、部屋に戻りました。

「ふう。ニンジン七本か…。もっと頑張らないとな。」お父さんは筆をきれいに洗って、箱に戻しました。よく使いこんだ古い筆です。絵の具のチューブも、最後の最後まで絞りこまれています。

ミーちゃんの家は、とても貧乏な家でした。お金もあまり持っていないので、毎日ごはんを食べるだけで精一杯でした。そのため、ミーちゃんの服もお母さんのおさがりで、靴も少しボロボロです。ミーちゃんも、最近になって、自分の家が貧乏だということに気づきました。

ミーちゃんは、貧乏でも気にはしていませんでしたが、毎日大変そうにしているお母さんや、必死に絵を描いているお父さんの姿を見ているうちに、自分も何かしたいと思うようになりました。

「ねえ、お父さん。お父さんは、私たちが暮らしていくために絵を描いているの?」

 

 

「ははは。おもしろいことを聞くね。お父さんは、絵を描くのが仕事だからね。そりゃあ、家族みんなが暮らしていくためには、お金が必要だからということもあるけど。」

「大変じゃないの?」

「それは大変なときもあるけど…。お父さんは、絵が好きなんだ。だから、絵を描いていれば、いやなことも忘れられるんだよ。ミーちゃんも、好きなことの一つや二つあるだろう?」

「私は…。」ミーちゃんは、お父さんの描いた絵を見ました。

「私は、お花が好き。だって、小さい頃から、お父さんの描くお花の絵を見てきたんだもの。」

「そうか、そうか。あはは。」お父さんは少し照れているようでした。

「ミーちゃんはお花が好きなんだよな。」

「うん。」

「好きっていうのは大切なことだよ。好きなことがあると、元気になれるからね。」

「うん。私、お花大好き。」

「よしよし。お父さんも、これからたくさんお花の絵を描くからね。お父さんも、花が好きさ。その気持ち、忘れないようにするんだよ。」

「うん。私、忘れない。」

ミーちゃんは布団に入りました。お父さんの部屋からは、夜遅くになっても灯りがもれていました。

続く