おじいさんのヒゲ https://amzn.to/32ijhH8
森の中にある丸太小屋に、小柄な、かわいいおじいさんが住んでいました。おじいさんは、真っ白なヒゲをはやしています。おじいさんはヒゲをさすりながら、「今日もいい天気だなあ。」と大きく伸びをしました。おじいさんは、今晩の食事のために、釣りざおと、えさと、釣った魚を入れるためのかごを持って、魚釣りに出かけました。おじいさんは川に行くための近道の途中で、野草やキノコも拾いました。森の小道を歩いていると、草の茂みの中に、きらきらと光るものが見えました。「何だろう?」と思って、おじいさんが近づくと、そこには、見たこともない金色のキノコが生えていました。
「はて、これはキノコのようだが、見たことのないキノコだね。」おじいさんはキノコを手に取り、においを嗅いだり、つまんでみたりしました。
「ひょっとしたら、とても美味しいキノコかもしれないな。どれ、少しちぎって食べてみるとしよう。」おじいさんはキノコをちぎり、口に運びました。
「もぐもぐ、ごっくん。ああ、美味しい。これは最高のキノコだ。」おじいさんは感激しています。
「残りのキノコも取っていこう。」おじいさんは、そこに生えているキノコを全部かごに入れました。
しばらく歩くと、いつも魚釣りをする川に着きました。
「どれ、今日もたくさん釣れるといいな。」おじいさんは釣りざおに、えさのミミズをつけました。
「ごめんよ、ミミズ君。今日も美味しい魚を見つけておくれ。」一声かけてから、釣りざおを川に投げ入れました。
どれくらいの時間が過ぎたでしょうか。まだ、一匹も釣れません。
「おかしいな。今日は全然つれないな。魚の引越しでもあったのかね。」
おじいさんは、お腹が空いたので、さっき拾ってきた金色のキノコを全部食べてしまいました。おじいさんはお腹がいっぱいになったので、眠ってしまいました。
しばらく眠っていると、「ビクン、ビクン」何かの音がしています。おじいさんは目を覚ましました。
「なんだか、体が重たいな。何かに引っ張られているような感じがするな。」
「ズサーッ」おじいさんは川のほうへ引っ張られています。
「なんだ、なんだ、どうしたんだ。おや、これは一体何だろう?」見ると、白い糸のようなものが、川に向かって伸びています。おじいさんは立ち上がりました。
「うわぁー。」よく見てみると、それはおじいさんのヒゲでした。
「どうして、わしのヒゲがこんなに伸びてしまっているの。何か変なものでも食べたかね。」おじいさんは考えました。
「ひょっとしたら…。」そうです。あの金色のキノコです。
「わしは、あの金色のキノコを食べたな。あれはヒゲを伸ばすキノコだったか。おっとっと。」何かが、ものすごい力でおじいさんのヒゲを引っ張っています。おじいさんはヒゲを手繰り寄せました。するとそこには、たくさんの魚が食いついていました。
「これはこれは。たくさん魚が釣れているな。」この日おじいさんの釣った魚は、どれも美味しそうです。
「よし、今日はこれくらいにしておこう。」おじいさんは、魚をかごいっぱいにつめました。
「はて、わしのヒゲはどうしようかね。こんなに伸びてしまって。とりあえず持って帰ろう。」おじいさんはヒゲを束ねて、かごに入れました。
家に着いたおじいさんは、釣った魚を料理して食べました。おじいさんの飼っている猫にも分けてあげます。
「どうだ、うまいか。」「ニャー、ニャー。」
食事を終えて、おじいさんはお風呂に入りました。伸びたヒゲのせいで、お風呂の中は、ぎゅうぎゅうです。
「困ったな。よし、ヒゲを切ってしまおう。」おじいさんは長く伸びたヒゲをそりました。
「ふう。これで軽くなったよ。楽ちん、楽ちん。」おじいさんは上機嫌で布団に入りました。
「ニャー、ニャー。」猫の鳴き声で、おじいさんは目を覚ましました。
「よしよし、猫ちゃん。こっちへおいで。あれれ、なんだかふさふさしているね。どうしたんだい?」猫を抱きかかえて、よく見てみると、猫にヒゲが生えていました。おじいさんは、目をこすってから、もう一度よく見てみました。やはり、どう見てもヒゲが生えています。
「どうしたのかね、猫ちゃん。ヒゲが生えているよ。何か変なものでもたべたかね。」
おじいさんは考えました。ふと足元を見ると、そこには、あの金のキノコのかけらが落ちていました。
「猫ちゃん。お前もキノコを食べたんだね。このキノコはヒゲが生えるキノコだから、食べちゃだめだよ。どれ、ヒゲをそってあげよう。」おじいさんは、猫のヒゲをそってあげました。
「これで、すっきりしたろう。もう食べるんじゃないよ。」「ニャー、ニャー。」
続く