僕たち家族は、街外れにあるレンガ造りの一軒家に住んでいます。

 

その家には陶芸部屋があって、僕がそこで作った作品を売って生計を立てていました。

 

ある日、僕は不思議な鳥に出会いました。

 

それは、いつも陶芸用粘土の土を取りに行っている山のふもとでのことでした。

 

僕がいつものようにスコップで土を掘り返していると、鳥の鳴き声のような音が聞こえてきました。

 

いままで聞いたことのない、とてもきれいな鳴き声でしたから、どんな鳥が来ているのだろうと思って見に行ってみました。

 

しばらくすると、うつ伏せになって地面に倒れこんでいる一羽の黄色い鳥がいました。

 

「どうしたんだい、鳥さん。大丈夫かい?」僕が声をかけてもピクリとも動きません。

 

僕はそっと鳥を持ち上げました。

 

そして大変なことに気づきました。

 

「大変だ。鳥さん、息が止まってるじゃないか。」

 

鳥は何かが口ばしに挟まってしまって、息ができなくなっていました。

 

目を見開いてしまっていて、口からは泡も出ています。

 

「ちょっと待ってて、今、とってあげるからね。」

 

僕は、片手で鳥の頭を固定し、口ばしに挟まっているものを、力いっぱい引っ張りました。

 

「よいしょ、よいしょ。ポンッ。よし、取れた。これでどうだろう?」

 

鳥はしばらく僕の手の中でぐったりしていましたが、やがて息を吹き返しました。

「ゴホン、ゴホン。ゴホン。ふう、危なかった。」

 

「大丈夫?鳥さん。もう苦しくない?」

 

「ああ、大丈夫。君かい?助けてくれたのは。どうもありがとう。いやあ、ものすごくお腹が空いてたから、何か食べようと思って。それで無理して、あの木の実を食べようとしたら喉に詰まっちゃったんだ。」

 

「それは大変だったね。でも、あれを一口で食べるのは無理があると思うよ。」

 

「う、うん、ちょっと欲張りすぎたかな。あれ?ところであの木の実はどこにいった?」

 

鳥はきょろきょろあたりを見回していました。

 

僕が足元を見ると、くるみが一つ落ちていました。

 

「ねえ、木の実って、これのこと?」

 

鳥が僕のほうに向きかえりました。

 

「ああ、それそれ。茶色くておいしそうだろう?」

 

鳥はよだれを垂らしています。

 

「でも、鳥さん。これ、くるみだから、鳥さんには硬すぎて食べられないと思うけど。」

 

「えっ?そんなに硬いのかい?」

 

そう言って鳥は、くるみにかじりつきました。

 

「んんっ、この、この。本当に硬いな。この。パキッ。」

 

くるみが割れた音でしょうか。

 

何か乾いた音がしました。

 

「あ、痛たたた。硬すぎるよ、これ。」

 

乾いた音は、くるみが割れた音ではなく、鳥の口ばしが欠けた音でした。

 

「こんなに硬いもの、食べられたものじゃない。君にあげるよ。」

 

そう言って、黄色い鳥はどこかへ飛んでいきました。

 

僕の手元には、くるみが残りました。

 

よく見ると、たしかにいい色艶をしていました。

 

「きれいだなあ、このくるみは。家に飾っておこうかな。」

 

僕はそのくるみをポケットにしまい、家に帰りました。

 

 

「ただいま。」

 

「あら、おかえりなさい。」

 

妻のハルミです。

 

「ハルミに、プレゼントがあるんだ。」

 

「あら、何かしら?」

 

「これだよ。」

 

僕はポケットからくるみを取り出しました。

 

「これは、くるみかしら?とても綺麗な色ね。」

 

「そうだろう?今日、山へ行ったら、黄色い鳥がこのくるみをくわえていたんだよ。」

 

「まあ、こんなに大きなくるみを?」

 

「うん。その鳥も息ができなくなってて大変そうだったけどね。」

 

「その鳥は無事だったの?」

続く