おばあさんのヒゲ
森の中にある丸太小屋に、小柄な、かわいいおばあさんが住んでいました。
おばあさんは、真っ白なヒゲをはやしています。
おばあさんはヒゲをさすりながら、「今日もいい天気だなあ。」と大きく伸びをしました。
おばあさんは、今晩の食事のために、釣りざおと、えさと、釣った魚を入れるためのかごを持って、魚釣りに出かけました。
おばあさんは川に行くための近道の途中で、野草やキノコも拾いました。
森の小道を歩いていると、草の茂みの中に、きらきらと光るものが見えました。
「何だろう?」と思って、おばあさんが近づくと、そこには、見たこともない金色のキノコが生えていました。
「はて、これはキノコのようだが、見たことのないキノコだね。」
おばあさんはキノコを手に取り、においを嗅いだり、つまんでみたりしました。
「ひょっとしたら、とても美味しいキノコかもしれないな。どれ、少しちぎって食べてみるとしよう。」おじいさんはキノコをちぎり、口に運びました。
「もぐもぐ、ごっくん。ああ、美味しい。これは最高のキノコだ。」
おばあさんは感激しています。
「残りのキノコも取っていこう。」
おばあさんは、そこに生えているキノコを全部かごに入れました。
しばらく歩くと、いつも魚釣りをする川に着きました。
「どれ、今日もたくさん釣れるといいな。」
おばあさんは釣りざおに、えさのミミズをつけました。
「ごめんよ、ミミズ君。今日も美味しい魚を見つけておくれ。」
一声かけてから、釣りざおを川に投げ入れました。
どれくらいの時間が過ぎたでしょうか。
まだ、一匹も釣れません。
「おかしいな。今日は全然つれないな。魚の引越しでもあったのかね。」
おばあさんは、お腹が空いたので、さっき拾ってきた金色のキノコを全部食べてしまいました。
おばあさんはお腹がいっぱいになったので、眠ってしまいました。
しばらく眠っていると、「ビクン、ビクン」何かの音がしています。おばあさんは目を覚ましました。
「なんだか、体が重たいな。何かに引っ張られているような感じがするな。」
「ズサーッ」おばあさんは川のほうへ引っ張られています。
「なんだ、なんだ、どうしたんだ。おや、これは一体何だろう?」
見ると、白い糸のようなものが、川に向かって伸びています。
おばあさんは立ち上がりました。
「うわぁー。」よく見てみると、それはおばあさんのヒゲでした。
「どうして、わたしのヒゲがこんなに伸びてしまっているの。何か変なものでも食べたかね。」
おばあさんは考えました。
「ひょっとしたら…。」
そうです。あの金色のキノコです。
「わたしは、あの金色のキノコを食べたな。あれはヒゲを伸ばすキノコだったか。おっとっと。」
何かが、ものすごい力でおばあさんのヒゲを引っ張っています。
おばあさんはヒゲを手繰り寄せました。
するとそこには、たくさんの魚が食いついていました。
「これはこれは。たくさん魚が釣れているな。」
この日おばあさんの釣った魚は、どれも美味しそうです。
続く